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2018.05.15
毎年、3月にアナハイムと9月にボルチモアで行われるNatural Products EXPOは食品業界では最も大きな展示会になっている。今年のアナハイムの展示会には3,500以上の出展社と85,000人が参加し、昨年の9月のボルチモアでは1,500社の出展と29,000人が参加した。この展示会は自然製品の展示会で、その中心は有機自然食品である。今回はこの業界の最近の様子を書いてみることにする。

有機食品はアメリカの食品市場で最も伸びているカテゴリーの食品である。農薬、添加物、着色料などの不使用により健康的であると思われているためと、有機食品は環境にやさしいと考えられているからである。有機商業協会(OTA)のデータによると、2017年には売上が前年に比べ8.3% 伸びて430億ドルの規模になっている。この売上額は食品市場全体の約5.3% に達する勢いである。こうした需要の伸びは国内の生産では間に合わなくなっており、この数年間、アメリカは有機食品や有機原料の輸入を増やしている。カナダ、日本、EUなどとの有機食品規則の相互の等価性が認められるようになったこともその一因である。有機食品は多くの消費者層に浸透している。
それは一昔前では特定の有機食品を取り扱う自然食品店だけで販売されていたのが、最近ではほとんどのスーパーや、Wal-Mart, Target, Costcoなどの量販店でも取り扱うようになったからである。

(写真1)は一般スーパーのSafewayの有機生鮮野菜果物の売り場である。
有機食品で最も消費量が多いのは生鮮野菜果物で、Nielsen社の調査によると、有機生鮮野菜果物の売り上げはこの1年間で9% 売上げが伸び、生鮮野菜果物の売り上げの約10% が有機製品になったとしている。
最近までは有機製品を買う時に消費者は小さなパッケージの製品を買っていたが、最近は大きなサイズにパッケージしたものを買うようになってきた。洗浄してカットしたすぐに食べられる有機サラダはReady-Pac Foods社によると、この1年間では3% 売り上げが伸びているという。パッケージされたサラダなどではケール、キャベツ、キャロット、ブロッコリーなどの混ざったもの、さらにチキンなどが入ったそれだけでもミールになるような製品がよく売れている。
(写真2)はその例である。有機果物、野菜、乳製品がポピュラーな理由は、子供に安心して食べさせることができると考えている親が多いからである。しかし、有機食品は一般的に言って普通の食品に比べて値段が高く、そのために有機食品を買うのをためらっている消費者も多い。特に肉製品は普通の価格に比べて50% 以上高く、中には倍以上するものもある。有機果物野菜の値段も安くなってきているが、有機食品は高く売れるので農家も作る意欲がでてくるが、これが同じ値段で売られるようになると有機農業には経済的なインセンティブがなくなるので、有機農家が減る可能性がある。
有機農業も以前は小さな個人農家がほとんどであったが、次第に大農化になりつつある。有機食品は生鮮食品が多いが、加工食品にも広がってきている。それは多くの有機食品成分が作られ、諸外国からも原料が手に入れやすくなったからである。有機加工食品はほとんどの食品カテゴリーで作られている。そのいくつかを紹介してみよう。

(写真3) は、One Degree Organic Foods社の “Vegan Sprouted Ancient Maize Flakes” のシリアルで、古代の発芽有機穀類を使ったものである。
成分として、有機コーン、有機ココナッツ・パームからの砂糖、発芽有機ソバ麦、発芽有機アマランス、無精製の塩、トコフェロール(ビタミンE)である。
発芽した穀類も最近アメリカではよく使われている。
(写真4) は、Famleigh社のプリズム容器に入っているスープ “FAWEN” で、有機、ベーガン用、グルテン・フリーで、“Beet & Cabbage with Cumin”, “Broccoli & Cauliflower with Turmeric”, “Sweet Potato & Red Lentil with Cinnamon” の3種類がある。ビタミン、ミネラルが16種類入っており、1サービング (240ml) で 60-100カロリーで、ココナッツ・ウオーター、ココナッツ・ミルク、ココナッツ油を使っており、電解質も入っているので、運動をした後でもエネルギーを得ることができるとしている。これは冷蔵庫で冷やして飲むスープである。
(写真5) は、Pumpkin Tree Snacks社の “Peter Rabbit Organic” ブランドの子供用のスナック製品で、フルーツ、オーツ麦とチア、キノアを使った “Super Pats & Seeds” である。
“Apple & Blueberry”, “Banana & Mango”, “Banana & Strawberry” の3種類を出している。“Peter Rabbit” はイギリスの童話作家Beatrix Potterの有名な作品で、それをライセンスしている製品である。

(写真6) の冷凍ピザはAmy's Kitchen社の“Roasted Vegetable Pizza” である。
Amy's Kitchen社は多くの有機食品をだしており、冷凍ピザ製品は25種類も出しており、全部の成分が有機でないために有機認証を受けていないが、ほとんどの成分は有機成分を使っている。
この製品では包装の前面に「有機のシイタケ・マッシュルーム、スイート・オニオン、ローストした赤ピーマンで作られている」と表示している。
“Natural” または “All Natural”などと表示されている自然食品はスーパーの棚に多く並んでいる。一般的には成分が自然のもので、加工をできるだけしていない製品をいうのであるが、自然食品とは何かというとはっきりした法的定義はない。食品医薬管理局 (FDA) のサイトには、食品のラベル表示に “Natural” と書かれている意味は?として「食品科学の観点からすると食品はなんらかの加工がされており、地球上にそのままある製品ではなくなっているので、食品製品の “Natural” を定義するのは難しい」として、FDAは “Natural” およびそれに付随する言葉の使用に関する定義を行っていない。
しかしながら、「食品が合成色素、合成フレーバー、合成物質を含まないならば、その言葉の使用を反対していない。」としている。FDAの考えには食品加工、例えば農薬の使用や加工、製造方法などは含まれていない。しかしながら、最近、FDAは消費者グループや食品関連業界のグループから “Natural” の言葉の使用に対して規則の制定を求める声が上がっており、業界からの意見を集め始めた。この動きの背景には、これまでに “Natural” あるいは “All Natural” の表示で訴訟が起こされており、裁判所はFDAの行政的な判断を要請しているからである。これで “Natural” の定義がされるかどうかはまだまだ不透明で、行政的な判断が出るまでにはどれくらいの時間がかかるのかは不明である。
法的にはどうであれ、一般消費者の自然傾向は健康志向とともに加速しており、合成添加物、合成着色料、家畜へのホルモン、抗生物質の使用などをしていない食品を買う傾向は高まっている。食品業界はそうした傾向に対応しようとするできるだけ消費者が知っている成分だけを使った製品や、合成添加物、合成着色料を使わない、いわゆるクリーンラベル製品が増えてきている。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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