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2018.07.17
アメリカでは5年ごとに改訂される『食事ガイドライン』が、栄養政策において中心的な役割を果たしており、10年に一度大きな改訂が行われる。これは、「栄養についてこのように考えて毎日の食事を摂取しなさい」という国民に対する指針である。このガイドラインは食品業界にも大きなインパクトを与えるもので、業界は次のガイドラインがどのように変わるかに一喜一憂する。例えば、1990年代には脂肪の摂取を減らすようにガイドラインが出されると、低脂肪食品が多く出された。しかし、低脂肪食品は味がよくなかったために余り消費者には受け入れられなかった。最近は脂肪の中にはトランス脂肪や飽和脂肪などの悪い脂肪と、身体に良い多価不飽和脂肪、オメガ-3-脂肪などの脂肪があるとされて、これらの身体に良い脂肪は適切な量の摂取が勧められるようになって、油脂業界は、トランス脂肪酸の入った油脂の生産の停止と、オメガ-3脂肪やカノーラ油などのより健康的な油脂に切り替えてきた。塩や砂糖の摂取も同じで、業界は塩分や砂糖を減らした製品を出すようになってきており、製塩業者、砂糖業者はそれに対応して事業を見直さなければならなくなっている。天然甘味料のステビア甘味料製品が増えており、さらに天然甘味料の開発がされているのはそのためである。
この「食事ガイドライン」(最近の2015- 2020版は https://health.gov/dietaryguidelines/2015/guidelines/ で勉強できる)を詳しく説明することはさておいて、今回はこれまでに最もインパクトがあった全粒穀類について書いてみることにする。
全粒穀類については1995年のガイドラインまでは「穀類製品、野菜、果物をしっかり摂取しましょう」とだけ言われていたが、2000年のガイドラインに初めて全粒穀類の摂取が勧告された。全粒穀類にはビタミン、ミネラル、その他の栄養素が豊富に含まれており、食物繊維も多く含まれており、健康によいことはこれまでにも多くの研究で示されている。全粒穀類を多く摂取していると生活習慣病である心臓病、糖尿病、ガンなどのリスクが低くなり、また体重コントロールにもよく、消化器系の健康にもよいことがわかっている。ガイドラインの要項では、健康的な食事の栄養摂取の基礎として、「毎日全粒小麦、オーツ麦、玄米、全粒コーンなどの全粒穀類製品を6-11サービング摂取しましょう。」という項目が加えられた。2000年のこのガイドラインが出されると全粒穀類製品が徐々に市場に増え始めた。さらに2005年のガイドラインでは、1日85g以上、あるいは穀類製品の半分以上は全粒穀類製品を摂取するように勧めている。 その後2010年、2015年のガイドラインでも全粒穀類の摂取をしっかりとするように勧告が出され、全粒穀類の製品は増え続けた。全粒穀粒協会 (WGC) の2000年から2012年までの全粒穀類製品の新製品の数のデータ(表1) によると、その数は2008年までうなぎのぼりに増え続けた。スーパーのベーカリー製品の棚は1900年台では漂白した白い小麦粉を使った製品が中心であったのが、現在では半分以上が全粒穀類を使った製品に代わっている。同協会が2015年に行った調査では、消費者の約3分の2は、ガイドラインの「穀類の半分以上を全粒穀類で摂取する」という勧告通りに食べているという結果が出ている。こうした全粒穀類製品が市場で成功した理由は何であろうか。
もちろん、食事ガイドラインでの消費者へのキャンペーンが大きな要因であるが、全粒穀類協会 (WGC) は、全粒穀類製品に対してシール(写真1) を発行し、消費者に全粒穀物を十分摂取できる商品であることが容易にわかるようにし、その量も容易にわかるようにし、現在では12.000以上の商品にこのシールが印刷されている。同時に、穀粉業界やベーカリー業界、スナック業界、その他の穀類を使う業界が全粒穀類を使ったおいしい製品を次から次へと出していったことも大きな原動力となった。中でも全粒小麦粉を使った製品はそれまで口の中での食感が悪く、まずくて人気がなかったが、最近は硬質春小麦あるいは硬質冬小麦を粉砕したより白い全粒小麦粉が出されて食感も味も改善された。例えば業務用としてConAgra Mills社から “Ultragrain Hard Whole Wheat Flour” (写真2) が出されている。IFICの2018年の調査では、80% の消費者は全粒穀類がより健康であると認識しており、ビタミンDと食物繊維に次ぐ健康的な食品成分であると考えている。またNDP Groupの調査では、食事習慣で全体的に健康さを得るためには、タンパク質(56% の消費者)、全粒穀類(52%)、食物繊維(51%)、ビタミンC(50%)を挙げている。つまり全粒穀類が身体に良いという認識が定着したということを示している。

それではどのような製品が市場に出されているのであろうか。最も多いのがシリアル製品である。全粒オーツ麦を使ったオートミールは昔からあったホット・シリアルであるが、2000年くらいから売り上げが伸びている。その大手であるQuaker Oats社(PepsiCoの部門)は、次から次へと新しいオートミール製品を出している。オーツ麦を使ったコールド・シリアル(そのまま牛乳をかけて食べるシリアルの総称)である “Cheerios” は全粒穀類製品で、子供にはあまり喜ばれなかったが、General Mills社が “Honey Nut Cheerios” (写真3)を出して子供のシリアルのトップになった。これはハチミツで少し甘みを付けたもので、その甘さゆえ子供達から支持されると同時に、全粒穀類で可溶性食物繊維(ベータグルカン)が多く含まれ、健康的なイメージも合わせ持つため、親が妥協して買うというマーケティングに成功した製品である。
他社もこうした多くの全粒穀類を使った製品を出している。グラノーラは押しつぶした全粒オーツ麦を使ったシリアルで、ナッツやハチミツあるいは他の甘味料が含まれており、ローストしてクリスプにしたものである。これらのシリアルを固めて作ったシリアル・バーやグラノーラ・バー製品は多くスーパーの棚に並んでいる。ミューズリ―は押しつぶした全粒オーツ麦に全粒小麦、全粒ライムギ、全粒ライ小麦、全粒バーレイ小麦、さらにナッツ類などを混ぜたシリアルで、これも全粒穀類製品である。例えば、Bob’s Red Mill社が出す製品(写真4)がある。最近はこうしたシリアル製品にナッツやサンフラワーシード(ヒマワリの種)、パンプキンシード、チアシード、キノア(これらも精製していないので全粒穀類のカテゴリーに入れられる)などが混ぜられていることもあり、種々な製品が出されている。

次に全粒穀類が使われている大きなカテゴリーはベーカリー製品で、特にパン類では全粒穀類が使われている製品が主流になって来ている。スーパーマーケットに行くと、ベーカリー製品は大きな場所を占めているが、最近ではその半分以上の製品が全粒穀類を使った製品になった(写真5)。
上に書いた白い全粒小麦粉を作った食パンがSara Leeブランド(写真6) で出されているが、最近のパン製品には全粒小麦粉だけで作ったものだけでなく、他の全粒穀類を使った製品が多くなっている。例えば、元ギャングで刑務所に入っていたDavid Killer氏が更生して始めたベーカリー会社David’s Killer Bread社が出している食パンには、“21 Whole Grains and Seeds”, “Good Seed” などがあり、そのほとんどが種々の全粒穀類とシードなど混ぜた全粒穀類パン(写真7) である。大手のベーカリー会社も全粒穀類製品を増やしている。
スナック製品にも全粒穀類製品が増えた。全粒穀類スナックで最も身近なものはポップコーンである。クラッカーやクッキー製品では最近全粒穀類、古代穀類(このコラムですでに紹介した)、サンフラワーシードやパンプキンシードを使った製品が増えている。その一部を (写真8)に示した。その中の Food Should Taste Goodの “Multigrain Tortilla Chips” (写真8中段左)は、玄米、コーン、ゴマ、サンフラワーシード、キノアが使われているマルチグレイン製品である。全粒穀類は健康的な食品成分として、これら以外の食品にも使われている。例えば、パンケーキ・ミックス、ワッフル・ミックスや揚げ物に使うパン粉でも全粒小麦粉を使った製品も出されている。2010年頃まで伸びた全粒穀類製品はより健康的な食品群としていまだに伸び続けている。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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