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2018.10.15
機能性成分を加えた食品は意図的に機能性のある食品にしようとするものである。世界各国でも欠乏しているあるいはしそうなビタミン、ミネラルを添加することは1920年代から行われている。アメリカでは一時期ビタミン、ミネラルの添加を法的に規制しようという試みがあったが、現在では規制はされていない。ただし欠乏すると病気になる栄養素を科学者グループが特定し、それが不足していると考えられる場合や、加工過程で減少する場合は、その栄養素を添加することがガイドラインとして勧められている。パンの製造に使う硬質小麦粉には現在ではチアミン、リボフラビン、ナイアシン、鉄分、葉酸が添加されている。葉酸は数年前からで、パスタ製品にも葉酸の添加が勧められており、この添加で嬰児の脊椎欠損症が減ったと言われている。牛乳にはビタミンAとビタミンDが加えられている。これは義務的ではなく自主的であるが、昔からほとんどの牛乳に加えられている。ビタミンAは視力、免疫性、生殖、細胞間情報伝達に重要であり、ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがある。マーガリンにはビタミンAの添加が義務付けられ、ビタミンDの添加は自主的とされている。塩には知的発達、甲状腺疾患などに関係するヨウ素が自主的に加えられている。またオレンジジュースには骨粗しょう症予防のためにカルシウムとビタミンDを加えたもの(写真1) が販売されている。

その他、ビタミン、ミネラルを加えた食品、飲料は数多く出されている。朝食用の牛乳をかけて食べるシリアルにはビタミン、ミネラルを加えたものがほとんどで、General Millsから出されている “Total” ブランドのシリアル(写真2) には、ビタミンC、鉄分、ビタミンE、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、パントテン酸、亜鉛がそれぞれ、1日推奨摂取量の100%、ビタミンAとカルシウムは15%、ビタミンDは40%、リンが20%、マグネシウムが10% 添加されている。シリアルを食べることで複合ビタミンを摂取しているようなものである。朝食用シリアルは一般的な健康を保つための機能性食品である。オーツ麦の可溶性食物繊維であるベータグルカンには心臓病への効果があることを科学者委員会が認めており、オーツ麦を使ったオートミールやシリアル製品では、そのような健康効能を表示することができる(このコラムの「機能性食品とラベル表示(1)」にリストされた健康効能 (A) のカテゴリーの10番目)。

スポーツドリンクは機能性飲料の代表的なものである。スポーツドリンクの代表的な “Gatorade” (写真3) は、フロリダ大学のスポーツ選手が運動中の水分と電解質を補給するために開発されたものである。この大学のマスコットであるワニの英語であるAligatorからとった “Gator” はこの大学の愛称で、それからスポーツドリンクが “Gatorade” と呼ばれていた。大学はそれを飲料会社にライセンスして、現在はPepsiCoの大きなブランドとなっている。 エネルギーという機能性には法的規制は全くないので、多くのエネルギー製品がある。アメリカにはエネルギーがもっと欲しいと考えている人が多く、エネルギードリンクは機能性飲料では非常に大きなカテゴリーで、現在では種々のブランド製品が店頭に並んでいる。多くの製品は主成分としてカフェインが入っており、その他、ビタミンB類やその他の成分が入っている。最も売れているブランドは日本でも少し処方を変えて販売されている “Monster Energy” (写真4) である。エネルギードリンクでは、日本の「リポビタンD」を真似たショットサイズが売られており、そのトップブランドは “5 Hour Energy” (写真5) である。これにはビタミンB6、B12、ナイアシン、葉酸、シチコリン、チロシン、フェニルアラニン、タウリン、リンゴ酸、グルクロノラクトン、カフェインが含まれている。

最近はエネルギードリンクでも合成のカフェインを使わず天然のカフェインを含む成分を使ったエネルギードリンクが出されている。例えば、Biological Life社のエネルギー・ショット製品 “Herbal Energy4Sure” (写真6)では、ビタミンB6、B12、ナイアシン、パントテン酸、それに自社のエネルギーブレンド(粉末ガラーナ、オーガニック粉末アサイジュース、オーガニック粉末ザクロジュース、ヤーバ・マテ・エキス)を活性物質として使っている。その他、不活性物質として、甘味料ブレンド(オーガニック・アガベ・ネクター、エリスリトール、キシローズ、褐藻エキス、オーガニック・ステビア葉エキス)、濃縮オレンジジュース、オーガニック・フレーバー、クエン酸を使っている。
Campbell Soup社は、フルーツジュースをベースにし、カフェインが入っている緑茶を加えたエネルギードリンク “V8 Energy” (写真7) を3種類のフレーバーで出している。スナック製品でもエネルギーを表示する製品が出ている。
イリノイ州にあるSkyline Kitchen社は “Tea Squares” というブランド名で 茶葉を加えたスナック、“Tea Infused Energy Snack”(写真8)を販売している。同製品には、“Vanilla Chai”, “Acai Bluwberry”, “Citrus Green Tea Macha” の3種類のフレーバーがある。“Acai Bluwberry” の成分は、膨らましたミレー、アーモンド、パンプキンの種、玄米シラップ、ココナッツ油、アガベ・ネクター、ブルーベリー、天然ブルーベリー・フレーバー、粉末アサイ、粉末紅茶、ヒマラヤ・ピンク塩である。固めて賽の目状に切り一口サイズにしたもので、腹持ちの良いスナック商品として認知されている。
エネルギー・バー製品も多く出されているが、主として運動をしているときのエネルギー補給とパーフォーマンス増強を得るものである。一例としては “Power Bar” の “Performance Energy Bar” (写真9) がある。 これにはカフェインなどは入っておらず、炭水化物とタンパク質と脂肪の混合で運動中にエネルギーを得るものである。このコラムの第1回に書いたトレイル・ミックスもエネルギーを得るために使われるもので、エネルギー・ミックスとして販売されているものもある。

多量に摂取すると有害な成分を少なくした、あるいは除いた食品、飲料が最近多く出されているが、これも機能性食品のカテゴリーとして考えられる。例えば低脂肪食品は脂肪の摂取を減らして肥満やその他の脂肪摂取からくる病気にならないようにする機能性があると考えられる。アメリカの加工食品には塩や砂糖が多く含まれているものが多く、増えている生活習慣病の原因とされている。政府は塩、砂糖の摂取量を減らすことを国民に勧めており、最近では塩分の摂取量、砂糖の摂取量を減らそうとする人が増えている。
Campbell Soup社は主要スープ製品での塩分の使用を20% 少なくして販売したが売り上げが下がり、また塩の摂取量に関する過去の研究のメタ分析で、塩の摂取を減らしても心臓病や総死亡率には関係が見つからなかったとする研究も発表され、塩の量を再び増やしたというケースもある。しかし、最近は塩分、砂糖を減らした製品は増えている。例えば、J.M. Smuckers社は多くのジャム(アメリカではPreservesと呼ばれている) を出しているが、砂糖分を半分にした製品 (写真 10) を出している。Kraft Heinz社は “Heinz” ブランドのケチャップを出しているが、低砂糖製品として普通のケチャップより糖分が75% 少ない “No Sugar Added Ketchup” (写真11) を出している。その他、脂肪、コレステロール、カロリーなどを減らした食品が多く出されている。

今回の機能性食品にはサプリメントは取上げなかったが、米国ではサプリメントは食品として考えられているので、機能性食品の一部である。最後に機能性食品をわかりやすくするために分類をしてみた。広い意味での機能性食品をこれまで3回に分けて紹介したが、機能性食品の狭義の定義としては、「健康、病気、症状などに効果(治療、予防、改善、維持、強化)があると表示、または意図されている食品」といえる。(完)
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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