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2019.05.15
アメリカの消費者は便利な食品を探している。日本でも同じようなことが起こっているが、共稼ぎの多いアメリカの家庭では毎日毎日の食事の準備は大変である。最近は生活ペースが速くなってきており、食事の準備にかかる労力や時間をいかに軽減するかが求められている。日本では総菜というカテゴリーの食品がスーパー、コンビニ、デパ地下に多く並んでおり、便利である。アメリカでは冷凍あるいは冷蔵の調理済み食品があり、買って帰り電子レンジでチンとすればすぐ食べられるため人気がある。またデリカテッセンのセクションには調理したフライドチキンや限られた種類の調理済み食品がある。しかし、これらは何時も同じようなものが並んでおり、毎日買っていると飽きてくる。
他にミール・キット製品としてはいくつかの異なったタイプの製品がある。アメリカ人のコンフォートフードといわれているマカロニ・アンド・チーズ(写真1)のように、中に入っている乾燥マカロニを調理し、それに牛乳とチーズミックスを加えて加熱して作るキット製品や、Kraft Heinz1社が出している “Lunchable” (写真2)という名の子供向けランチ・キット製品等がある。
これは子供が中に別々に包装されている食材を自分で合わせてサンドイッチを作るものである。Tyson Foodsのスロークッカー用のミール・キット製品 “Ready for Slow Cooker”(写真3)は、肉と野菜のカットされたものが調理用香辛料と一緒にキットになっており、スロークッカーに朝入れてセットしておくと夕方帰って来た時にはすぐに食べられる状態に調理されている製品である。
また冷凍製品では肉、野菜、ソースが予めキットになっており、フライパンでこれらを合わせるとすぐに料理ができるというミール・キット製品(写真4)もある。これらは殆どがミールあるいはミールの一部を簡単にできるというもので便利なものであるが、ほとんど加熱だけをするもので、手っ取り早く食事ができるようにしたものである。
この数年ポピュラーになりつつあるものは、レシピと一緒に調理に必要なフレッシュな食材が予めすべてキットとして揃えられており、レシピに従って調理をするだけで済むというミール・キット製品である。忙しい若いカップル、高年齢層のカップル、単身者などである程度自分で調理したいという人には便利な製品である。このミール・キットのサービスには、すべての食材とレシピを箱に包装して家にまでデリバリーするサービスと、一定地域の住民を対象にしてセントラル・キッチンあるいは店舗内のキッチンで材料を揃えてミール・キットを作り、顧客に店舗まで取りに来てもらう方法の二種類がある。後者の方法を用いている店は今では殆ど見られなくなった。

ミール・キットをオンラインで受注し、デリバリーするビジネスはまだ続いており、Hello Fresh社、Blue Apron社、Every Plate社、Sun Basket社、ダイエット用ミールを提供するDiettogo社、Martha & Marley Spoon社、冷凍のダイエット用ミールを提供するbistroMD社、グルテンフリーのミールを出すFreshly社などがある。すでに食材が調理できるようにカットされたもの、自分でカットをするもの、1週間分を買うもの、買うミールの数には制限がないもの、会員制になっているものなど、種々な形がある。
業界の30% のシェアを持つと言われている最も大きなHello Fresh社は、ドイツのベルリンで始まった会社で、オランダ、オーストラリア、カナダ、イギリス、アメリカなどで営業している。自分の家族にあったプランで、塩分少なめなどの食事制限なども指定でき、好きな日、時間にデリバリーをしてくれる会社で、現在では世界で145万人の購入者がいるという。アメリカでの購入者数は明らかにされていない。最近、Hello Fresh社はUSDA認証のオーガニック・ミール・キットを提供するGreen Chef社を吸収し、オーガニックのヴィーガン・メニュー、グルテン・フリー・メニュー、パレオ・メニュー、ケトジェニック・メニューなど多くのミールプランを消費者に提供している(写真5)。

Blue Apron社はミール・キット・デリバリーでは大きな会社の1つで、2人分とファミリー・サイズのミール・キットをほぼアメリカの全州で提供しており、1週間分を注文し冷凍で配送する形態をとっている(写真6)。ミールのタイプは普通のミール、ベジタリアンや、更には特定の肉を食べない人などにもメニューを提供している。アレルゲンは同じ調理器具を使っているので、食アレルギーの人は注文しないようにと注意喚起している。Chef'D社は特に会員になって1週間分を注文する必要もなく、テレビに出ているシェフなど複数のシェフが作った100以上もあるメニューから好きなものを好きなだけ注文できる。この会社はアメリカ糖尿病協会、Atkinsダイエット、Weight Watchers(ダイエット会社)とタイアップして糖尿病患者やダイエットのためのメニューを作って提供している。食材はそれぞれ別のプラスチックバッグに入れられてアイスパックで送られてくる。Sun Basket社はパレオ・ダイエット、グルテン・フリー、ヴィーガン、糖尿病などのミールを提供している。Amazon.comもこの市場に参入しており、多くのミール・デリバリー会社が競争している。
Packaged Factsによると、ミール・キットはその高い値段、膨大に使用する包装、そしてあまり融通が利かないインターネットでの注文モデルにより、最近では徐々に消費者離れが始まっていると指摘する。この成長の鈍化と、ミール・キット会社同士の販促競争の激化で、最近多くのミール・キット会社が失敗しており、ミール・キット事業の将来性が問われている。Packaged Factsの予想では、ミール・キットの売上成長率は、2018年と2019年は20% くらいだが、2020年には16.2%、2023年にはたったの5.8% で、今後5年間の年平均成長率は12.2% しか見込まれていない。ミール・キットが独立事業体として運営されていると、スケールメリットが得られないからで、確率した流通ネットワークなしでは生鮮食材の配達は難しい。ミール・キットセグメントを最も圧迫している原因はその価格で、最も安い $10でも、調理が必要であることを考えると、定期購入のキャンセル理由になる。また、食材を安全に届けるために必要な包装の量も、大きな障害となっている。ミール・キット企業の将来性はもっと年配の消費者や家族をターゲットにしたマーケティングと、定期購入での柔軟性の向上、他の補完的サービスの提供と、実店舗を有するスーパーとの提携であるようである。
事実、スーパーからの圧力がかかっており、すでに数社がスーパーに買収されている。KrogerはWalmartを除きアメリカのスーパーマーケットでは最も大きな会社であるが、その傘下に20以上のブランドのスーパーマーケット2,782店舗を所有している。昨年Home Chef社を買収し、Home Chef社は現在のままの経営を続け、Krogerのミール・キット製品の店頭およびオンライン販売の企画、販売を担当する。Krogerの店頭ではミール・キット製品は “PREP+PARED” のブランドで、525店舗で販売されている(写真7)。Chef'D社は一度破産したが別の会社に買収され、立て直しが計られ、現在ではカリフォルニア州で経営するGelson Marketのスーパーでミール・キット製品を提供している。
他のスーパーのチェーンもミール・キット製品を販売するようになってきている。中西部のチェーンスーパーであるHi-Vee では、最近ミール・キットをインターネットで注文し、店頭で受け取るかデリバリーしてもらうかを選択できるサービスを開始している。Giant Food Stores のチェーンでは従来は自社で作った “Giant Fresh Meal Kit” のみを販売していたが、昨年中頃からHello Fresh社のミール・キット製品を169店舗全店で販売している。AlbertsonsはPlated社を買収し、そのミール・キット製品の販売を今年の末にはチェーンの数百店に拡大する予定である。Walmartも自社で開発したミール・キット製品を2,000店のデリ・セクションで作り、販売することにした。こうした動きは、これまでインターネットで主に販売されていたミール・キット製品がスーパーでも買えるようになり、ミール・キット製品の販売会社がスーパーなどとタイアップして生き残りを模索していることの現れである。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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