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2017.09.15
今回はアメリカのニュースからいくつかの話題を取り上げてみた。変わりゆく政治と業界の動きは常に最新の情報を得て、それを自分なりに解釈して自分の仕事に反映することが大事である。
もちろん、全部が自分の仕事に関係がないかもしれないが、得る情報は多いほど何かの際に役立つものである。しかし、最近のように情報があふれる時代では、どれが正しい情報なのかを判断することも必要である。
トランプ政権と食品業界への影響
トランプ大統領はパリ協定から脱退することを発表した際に、「(協定は)アメリカ経済を弱体化し、労働者に不利にし、アメリカの主権を損ね、アメリカを他国より常に不利な立場に置くものだ」などと指摘した。
気候温暖化のために使うお金を国内のビジネスに使い、雇用を活発化させる方が大事であるとする考えである。アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領の支持率は33%まで落ち込んでいるという。しかし、その支持はいわゆる白人至上主義者たちの強い支持を受けている。まさにアメリカのリベラル主義と保守主義の対立はその溝を深くしている。
そうした中、前政権で進められていた行政方針に変化があり、国内の食品産業への影響が出始めている。トランプ政権は2017年度の予算でFDAが属している保健福祉省の予算を30%カットする予定で、これが議会で承認されると、FDAのいくつかのプログラムの進め方が遅くなる可能性がある。
すでに、2017年5月7日のレストランの栄養表示の遵守期日を2018年の5月7日に延長することを発表し、さらに業界への負担の軽減と柔軟性を検討することにしている。また、来年の7月に実施される食品、サプリメントの新しい栄養ラベル表示の遵守期日を延期することを発表している。
筆者が先日FDAの検査官と会ったときに話をしていると、予算カットで方針がどのように変わり、自分の仕事もどのように変わるのか不安であると言っていた。事業者からすると、こうした規制緩和は大歓迎であろうが、全体的な行政変化がどのような影響を与えるかの判断はまだ時間が必要である。
遺伝子工学食品について
遺伝子工学食品はこれまで遺伝子組換え食品と呼ばれていたもので、アメリカでは一般的にGMO(Genetically Modified Organisms)と呼ばれている。
「遺伝子組換え食品」という言葉は、以前は1つの生物(作物)の遺伝子を他の生物(作物)の遺伝子に挿入することで行われていた。最近では、その生物が持っている遺伝子そのものをピンポイント的に操作することによって新しい品種を作り出す技術が開発されており、「遺伝子組換え食品」という言葉は技術を表す言葉として不適切であり、最近では「遺伝子工学食品あるいは作物」と呼ぶように食品医薬管理局(FDA)が勧告している。英語では"Bioengineered Food or Crop"と呼ばれる。
日本やヨーロッパで反対が強いようであるが、アメリカではラベル表示なしですでに1996年から販売されている。ある調査によると、科学者の88%が遺伝子工学食品は安全であるとしているのに対して、一般の人は37%しかそう思っていないそうである。
その理由はなぜであろうか。これは環境活動家や素人科学者が遺伝工学食品に対する間違った情報を流しているからである。こうした人たちは非論理的なアプローチや恐れを武器にして一般消費者に遺伝子工学食品が危険なものであると思いこませているのである。
正しい理解をすれば遺伝子工学食品が安全であるものであることを理解できるはずである。事実、1996年遺伝子工学食品が商業化されて以来、アメリカ国民はそれを食べているが、消費者に遺伝子工学食品による健康被害の報告はない。
科学が最も進んでいる国である日本もそろそろ遺伝子工学食品を導入してもいいのではないだろうか。
最近、PG Economicsは作物バイオテクノロジーによる経済効果と環境効果を報告しており、過去20年間で、遺伝子組換え(GM)を含む作物バイオテクノロジーは、26カ国において、農業が与える環境への影響を有意に減らし、経済成長を促し、大豆、トウモロコシおよびアブラナをそれぞれ1億8,030万トン、3億5,770万トン、1,060万トンの増産を可能にしたとしている。
報告書のハイライトは以下の通り。

(1)農業の温室効果ガス排出量を削減
農家が節減耕起などの持続可能な農業技術を採用することで、化石燃料の燃料を減らし、炭素を多く土壌に留まらせている。

(2)農薬の散布を1996年~2015年にかけて6憶1,900万kg削減
これは世界規模で8.1%の減少を意味し、バイオテク作物の栽培は、農薬使用による環境への影響を18.6%減らした。

(3)作付地の増加を抑制
2015年に作物バイオテクノロジーが農家に導入されていなかったとすると、世界の生産レベル維持には、大豆で840万ヘクタール、トウモロコシで740万ヘクタール、綿で300万ヘクタール、アブラナで70万ヘクタールの土地が追加で必要となっていた。

(4)害虫による損害を減少
綿とトウモロコシに昆虫抵抗性作物技術が使われたことで、収穫が一貫して増加した。1996年~2015年にかけて、この技術を使った農家では、収穫がトウモロコシで平均13.1%増加した。大豆については、2013年以降、南米で平均9.6%の収穫増加となった。

(5)発展途上国での収穫増加
小区画の土地で農業を行う資源小国では、バイオテクノロジー利用によって収穫が最も増加し、主に小規模農家ら1,650万の貧困を緩和したという。
植物性乳飲料の市場が増加
Innova Market Insightsによると、世界の家畜からでない植物性乳飲料市場は、2018年には163憶ドル規模になるという(2010年は74憶ドル規模であった)。2016年、世界で発売された乳製品のうち、植物性乳飲料飲料は7%を占め(前年は6%)、5年毎で見ると、2倍以上の新製品が世界で発売されたことになる。
アメリカでは植物性乳飲料の市場は17億ドル規模と言われている。植物性乳飲料には、豆乳、アーモンド・ミルク、ライス・ミルクがトップ3で、他にはカシューナッツ・ミルク、マカデミアナッツ・ミルク、へーゼルナッツ・ミルク、ココナッツ・ミルク、オーツ・ミルク、ヘンプ・ミルク、亜麻仁ミルクなどがある。
豆乳は依然として主流であるが、アーモンド・ミルクの伸びは著しく、2010年2015年の5年間でその売り上げは250%伸びている。その理由はアーモンド・ミルクの味であろう。
アーモンドはナッツの中でも最も好かれているナッツで、その味が親しみやすいものである。植物性乳飲料製品には冷蔵製品と室温保存製品がある。最近は消費が増えたせいか冷蔵製品が増えている。冷蔵アーモンド・ミルクのトップ・ブランドはWhitewave社の"Silk Pure Almond"(写真1)で、2番目のブランドはBlue Diamond社の"Almond Breeze"(写真2)である。さらにCalifia Farms社の"Califia Farms"ブランド(写真3)が続く。
カシューナッツ・ミルク、マカデミアナッツ・ミルク、へーゼルナッツ・ミルクのナッツを使ったミルク製品はあまり多くない。
ナッツを使ったミルク製品では、フレーバーをつけ、成分を調整し栄養素を添加したものが多い。アーモンド・ミルクの1食分にはアーモンドは水で薄められ数粒分含まれているだけで、あとはフレーバー、栄養素が加えられている。
牛乳に比べてカルシウムやたんぱく質が少ないと指摘する栄養学者もいる。米乳製品ではImazine Foodsの有機玄米、有機カノーラ油および/またはヒマワリ油および/またはベニバナ油、海塩からなる"Rice Dream"(写真4)がよく知られている。
ココナッツ・ミルクではSo Delicious Dairy Free社がだす"Coconut Milk"(写真5)がある。
これらの会社は、コーヒ・クリーマー、ヨーグルトなどの代用製品も出している。ナッツを使ったこうした乳製品などがナッツの原料市場価格を圧迫していることは容易に想像できる。
しかしアーモンドの生産地であるカリフォルニア州ではその生産面積を毎年着実に増やしており、今後も毎年3.5%生産量が増えると予想されている。
価格上昇が農家の他の作物からアーモンドに転換する動きが促進しているのである。カリフォルニアのアーモンドの産地であるサンワキンバレーでは、この数年間干ばつで水の不足が言われている。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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