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2022.09.26
我々はビタミン、ミネラルを摂取しなければ、健康を害する。一体我々の身体に必要なビタミン、ミネラルとはどのようなもので、なぜ必要であるのか、どれだけ必要であるのか、必要なビタミン、ミネラルの入った食品にはどのようなものがあるのかを2回に分けて書いてみることにする。今回はビタミンについてである。まずビタミンというコンセプトは1900年代まではなかった。それまでは人類は種々な病気に悩まされていたが、病気の原因は何かほとんどわかっていなかった。それでも人間は色々な植物、動物などを試して、病気や症状を治す方法を考え出して来た。中国の漢方やインドのアーユルベーダなどがそうした人間の知恵であった。次第に化学が発達し、健康な身体を保つには炭水化物、脂肪、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を適切な量摂取することが必要であることが明らかにされてきた。こうした必須栄養素の中で、ビタミンは微量であるが身体の代謝が正常に機能するために必要な栄養素で、尚且つ人間の体内では合成されない有機化合物と定義されている。したがって我々はビタミンを含んでいる食品を毎日摂取しなければならない。ビタミンが発見されたのは20世紀になってからである。大航海時代といわれた17世紀には、長期間船に乗っている船員の多数が壊血病になって死亡していた。イギリスの医者が船員達に何らかの栄養が不足していると考え、彼らに柑橘類を与えたところ壊血病にならないことを発見したのは19世紀になってからである。食品と健康あるいは病気の関係が初めて認識されたのである。しかしながら、柑橘類に含まれる化合物がビタミンCと同定されたのは1920年代であった。その後、科学が発展すると食品及び食品成分と健康との関係が研究されるようになり、食品から摂取しないと病気になるビタミン類が次々と見つけられるようになった。
ビタミンの種類と1日推奨摂取量: ビタミンは必ずしも1種類の化合物ではなく、異なった構造の化合物の集合である場合が多い。ビタミンはアルファベットで呼ばれているが、化学名で呼ばれることも多い。表1にはビタミンの別名と同じビタミンが含まれる化合物をリストアップしてある。ビタミンを1日当たりどの位摂取すればいいかという情報は、アメリカでは科学アカデミーの医療研究所 (IOM) から、日本では厚生労働省から発表されている。しかし、これらの数値はこれまでに行われた研究データに基づいて出されているがまだまだ不確定なところが多く、ビタミンの1日推奨摂取量は、新しい研究データが出てくると時々改訂されている。ビタミンCなどは、ノーベル化学賞を受賞したポーリング博士などによるともっと多く摂取した方がいいらしく、博士自らは毎日5g摂取していたそうである。各国がそれぞれこうしたデータを出しており、中には量の異なるものもある。また、この表1の量は成人に必要な量で、子供や高年齢層では異なった量が推奨されている。食品と健康の科学は非常に難しく、まだまだ分かっていないことが多い。
ビタミンの過小摂取、過剰摂取: ビタミンは身体が必要とする栄養素であるので、欠乏すると表2に示されるような病気や症状が起こる可能性がある。ビタミンのいくつかは、長期にわたって過剰に摂取すれば、身体を正常化する機能を超えて異常をきたすことになる。普通の食品からビタミンを摂取している場合は、ビタミンを過剰に摂取することは少ないが、サプリメントなどの形で日常的に摂取している人では起こりうる可能性がある。ビタミンには水溶性と脂溶性があり、水溶性のビタミンB類やビタミンCは過剰なものは体内から排出されるので過剰摂取による健康被害は余り起こらない。その一方で脂溶性のビタミン類は身体から自動的に排出されないので、あまり多くの量を摂取すると表2に示されているような症状や病気になる可能性がある。サプリメント製品に書かれている摂取量を守ることが大事である。
ビタミンを適切量摂取しないと病気になることは、既述したとおり昔の船員が、航海中の野菜、果物不足のために壊血病になったことでわかる。これは2世紀以上も前の話であるが、最近でも同じようにビタミンの摂取が重要なことが葉酸で示されている。葉酸の不足、特に妊婦での不足は生まれてくる赤ん坊の脊椎障害(神経管閉鎖障害(NTD)) や頭蓋骨の開口部が残る一種の欠損症という病気の原因となり、そのような赤ん坊は長く生きられないことが分かっている。日ごろから野菜を多く食べているか、あるいはレバーを適切に摂取していれば葉酸が不足することはまずないが、西洋の食事では元々野菜をあまり食べないことに加え、特に若い女性はダイエットをする人も多いことから、葉酸不足の女性が非常に多かった。そのために葉酸の食品への添加が検討され、1998年にアメリカのFDAは、パン用の小麦粉やパスタ用の小麦(セモリーナ)、シリアルなどへの葉酸の添加義務規則を施行した。すでに以前から、アメリカではFDAの規則でパン、パスタ、シリアル、米製品に使われる標準小麦粉(全粒小麦は自然のビタミン、ミネラルが入っているので除外)には、ビタミン、ミネラルの欠乏から起こりやすい病気を予防するために、鉄分、サイアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3) の添加を義務化していた。この規則では、カルシウム、マグネシウム、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)はオプションとして加えることができる。アメリカの疾病予防センター(CDC) の調査によると、この葉酸添加規則によりアメリカで脊椎欠損症で生まれる赤ん坊の数は、毎年1,300人、割合にして35% 減ったとされている。この葉酸の添加はヨーロッパの各国でも行われており、EUでも少なくとも毎年、1,000人以上の赤ん坊がNTDにならなかったとされている。現在では世界の81ヶ国が葉酸の添加を義務付けている。このようにビタミンが、健康に重要な働きをしていることが示される。小麦粉への添加の例としてはGeneral Millsの出している “Gold Medal” ブランドの小麦粉(写真1)の栄養表示(クリックすると栄養表示の部分が拡大)を参考にされたい。
ビタミンの含まれている食品: 多くの野菜、肉、鶏肉、豆類、ナッツ類には何らかのビタミンが含まれている。日本では厚生労働省が「日本食品標準成分表」を出しており、現在は8訂版が出されている。これはほとんどの食品について分析された成分量がリストされており、ビタミンの量もリストされているので、この表を見ればビタミンがどのくらい含有されているかがわかる。ビタミンが多く含まれている食品として、ニンジン(βカロチン‐ビタミンAに体内で変換)、柑橘類(ビタミンC)、牛、豚、鶏肉のレバー(ビタミンA、葉酸)などはよく知られた食品であるが、それ以外のほとんどの食品にもビタミンは含まれている。ビタミンを1日推奨摂取量摂取しようと思えば、毎日、5種類以上の野菜を300g、(そのうち100gを緑黄色野菜)摂取する必要あると言われている。しかしながら、実際に調理をすると、水洗いや加熱でビタミンが減少するので、それも考慮に入れなければならない。
最近の健康志向で、食品市場には健康を増進する機能性成分を加えた機能性食品が多く出されている。上述した通り標準小麦粉を使った製品にはすべてビタミン、ミネラルが含まれており、またアメリカの牛乳にはビタミンA、ビタミンD、カルシウムが添加されているものが多く(これは義務ではない)、これらも機能性食品と呼ぶことができる。アメリカで販売されている朝食用シリアルの中で小麦粉を使った製品には上述のように小麦粉自体にビタミンが含まれているが、小麦粉ベース以外のほとんどのシリアル製品にもビタミンが添加されている。その中でも、General Mills社の朝食用のシリアルの “Total”(写真2) には11種類のビタミンとミネラルが入っており、ビタミンA, D はDVの10%、ビタミンA、C、E、B1、B2、B3、B5、B6、B9、B12はDVの100% が入っており、シリアルとサプリメント合わせたようなシリアル製品である。この製品の栄養表示(図2)には、1サービング量(40g)のシリアル単体の場合と、1サービング量のシリアルに半カップのスキムミルクを加えた時の栄養表示がされている。これはミルクと一緒に食べられることが多いので、そのような表示がされているのである。
ジュース製品はもともと健康的な飲料とみなされているが、さらにビタミンを加えてより健康的な飲料として出しているものもある。例えば、Campbell Soup社が出している “V8” ブランドの “V8 Healthy Greens”(写真3) は野菜(スイートポテト、黄色キャロット、ホウレンソウ、キュウリ、セロリ、ケール、ローメインレタス、ピーマン)と果物(リンゴ、パイナップル)のジュースを混ぜたものであるが、抗酸化剤であるビタミンA(β‐カロチン)とビタミンCを加えており、より健康的な機能性ジュースとして販売している。栄養表示にはビタミンDの量(0mg) とともに、ビタミンAとCの含有量もリストされている。ビタミンDは重要なビタミンであるので、その食品1サービング(分)中の含有量は、ミネラルである鉄分、カルシウム、カリウムと共にラベル表示に入れることが必須となっている。その他のビタミン類の含有量は、自主的に表示することができる。ジュース製品の中でもスムージーはアメリカでは健康のためによく飲まれるものである。例として、“Naked Juice” のスムージー製品の1つである “Blue Machine”(写真4)は、バナナ、ブルーベリー、ブラックベリー、人参を混ぜたものであるが、これにはビタミンC (DV 130%)、ビタミンE (DV 250%)、ビタミンB3 (ナイアシン) (DV 240%)、ビタミンB5 (パントテン酸) (DV 300%)、ビタミンB6 (DV 470%)、ビタミンB12 (DV 380%) などが1日推奨摂取量を超える量添加されている。
最近、牛乳の代わりに豆乳やアーモンドミルクを飲む人が増えている。牛乳アレルギーの人やラクトース不耐性の人だけでなく、ヴィーガン、ベジタリアン、あるいは動物性食品を極力避けている人達が利用している。しかし、牛乳に比べて栄養素、特にビタミンが少ないために、こうした植物性ミルク代替飲料にはビタミンを加えている製品が多い。例えば、有名スーパーSafewayのPB製品である “Organic Soy Milk”(写真5) には、ビタミンA、ビタミンD2、リボフラビン(ビタミンB2)、ビタミンB12が添加されている。“Silk” ブランドのアーモンドミルク(写真5)には、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンDが添加されている。
アメリカではバー製品が非常にポピュラーになっており、食事代わりやスナックとして利用されている。バー製品には、朝食用、素早くエネルギーを補給するためのエネルギーバー、筋肉を増強するためのプロテインバー、栄養を補助するための栄養バー、ダイエットを助けるためのダイエットバーなどいろいろな種類がある。その中でダイエットバー製品をここで1つ紹介する。Zone ダイエットは30年前にBarry Sears博士が開発したダイエット法で、体重をコントロールするだけでなく、病気の原因となる体内の炎症をできるだけ抑えるダイエット法で、現在ではダイエットシステムの指導だけでなく、“Zone Perfect” ブランドでダイエット用の食品を販売している。製品の中にはバー製品があり、その一つである “Zone Perfect Chocolate Peanut Butter” という商品名のバー製品(写真6)にはビタミンA, C, D, E, B1, B2, B3, B5, B6, B7, B9, B12 と12種類ものビタミンが入っている。これはダイエットしている人は栄養が偏る傾向があるので、それを是正するために添加されていると考えられる。
ビタミンが添加されている食品はアメリカでは、上に書いたシリアル、ジュース、植物性ミルク、バー製品だけでなく、多くの食品、飲料に添加されている。既述の製品ではアメリカの食品栄養表示の例を示したが、ヨーロッパ (EU) でも同様な栄養表示規則があり、食品に含まれるビタミンの量を知ることができる。
普通の食事だけではビタミンが不足していると考えられるときはサプリメントからビタミンを摂取することができる。ビタミンのサプリメントには、例えば、“Jamieson” ブランドの “Vitamin A”(写真7) のような、個別のアルファベット・ビタミン製品と呼ばれているものと、”Centrum”(写真8) のような、ビタミンだけでなくミネラルやその他の機能性成分を混ぜ合わせた複合ビタミン・ミネラル製品がある。また特定の病気や症状に対するサプリメントとして、例えば、 “Dynamic Brain”(写真9)のような認識力を保つためのサプリメントを始めとし、その他に関節炎のため、胃腸の調子を整えるため、骨粗しょう症にならないようにするためのサプリメントなど、多くの種類の商品が販売されている。こうしたサプリメントを摂取したいときは、医師にも相談をすることが勧められている。例えば上述した “Jamieson” の “Vitamin A” は1日推奨摂取量 900 マイクログラムに対して、1錠当たり10,000マイクログラム(10,000 IU)もの非常に多い量が含まれているため、過剰摂取に気を付ける必要がある。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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