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2023.06.23
この数年たんぱく質(以下ではプロテインとする)への関心が業界でも高まり、消費者もプロテイン摂取の重要性を認識しつつある。3大栄養素の1つであるプロテインは筋肉を作るのに必要な栄養素で、摂取するとアミノ酸に分解されて身体の一部になっていく。プロテインの摂取が不足すると、身体の筋肉の量が減り、基礎代謝の量も減り、種々の健康問題が起こる。プロテイン摂取の少ないダイエット法に取り組んだ結果アノレキシア(神経性無食欲症)などになると、体重の極端な減少だけでなく、体調不良、貧血、抜け毛、下痢、むくみなどの種々の症状が起こるので、適切なプロテインの摂取が必要である。高年齢層になると筋肉が減少する(サルコペニアと呼ばれる)ので適切な量のプロテインの摂取が必要である。最近発表された日本の研究では、高年齢層の人で動物性プロテインを多く食べている人は身体的、心理的、社会的な機能を高く保っているという結果が示されている。この研究はJournal of the American Geriatric Society (Vol.62, No.3, p.426)) に発表されており、平均年齢67.4歳の1,007人を対象にした食事調査の結果を研究したものである。特に、最初と7年後に動物性プロテインと植物性プロテインの摂取量を調べ、7年後にプロテイン摂取量と身体的、心理的、社会的な総合的機能に関するテスト結果との関連性を、対象者を4区分に分けて分析したところ、動物性プロテインを最も多く食べていた4分区の男性は最も少ない区分の男性に比べて総合的な機能低下が39% 少なかったとしている。植物性プロテインについては関係が見つからなかった。また女性についてもその関係はなかった。この研究結果だけでは判断はできないが、筋肉の減少は高年齢層に現れる多くの病気の原因あるいは助長する要因にもなっている可能性が高い。高年齢層の人は特にプロテインの摂取を十分にしなければならない。一方プロテインを過剰摂取すると窒素バランスを保つために排泄される尿素の量が多くなり、今度はそれを代謝しようと腎臓が常に働かなくてはならず、腎障害をおこすことが知られている。また、特に動物性プロテインを多く食べると、血液が酸性になり、それを中和するために身体は骨や歯からのカルシウムを溶かして血中に出すためカルシウムの排泄も多くなり、骨粗鬆症の原因にもなると言われている。肉食の欧米人に骨粗鬆症が多いのもそれが原因であると言われている。またプロテインの取りすぎはアトピー性皮膚炎、喘息、花粉症、鼻炎の原因とも言われている。プロテインの適切な摂取量は体重に対して0.8 – 1.0g/kg と言われている。体重70kgの人なら56g – 70g にあたる。
プロテインには動物性プロテインと植物性プロテインがある。動物性プロテインは動物の筋肉で牛肉、豚肉、鶏肉、卵、魚介類等が主な動物性プロテイン源である。植物性プロテインは、豆類、ナッツ、種子などである。動物性プロテイン、特に牛肉や豚肉、鶏肉は脂肪がついているので摂取する肉の脂肪量などに気をつける必要がある。カットによっては牛、豚肉では脂肪の多いものがあり、鶏の皮の部分にも脂肪が多い。魚もプロテイン源であるが、油の多い鮭などの魚には身体によいオメガ-3-脂肪が含まれており摂取が勧められている。穀類にもプロテインは含まれており、精白米には少量(1%以下)のプロテインしか含まれていないが、玄米には10% くらい含まれている。小麦粉には、8-12% くらい含まれているが、ドラム小麦から作られるパスタ用の粉セモリーナには12.5%のプロテインが含まれている。しかし、穀類は一般的には炭水化物を摂取するために食べられている。人間はこうした広範な種類のプロテインを摂取しているが、民族によっては摂取するプロテイン源が異なる。西洋人は主に肉食で動物性プロテインを好み、東洋人は植物性プロテインの摂取が多いが、最近ではこのパターンも変わってきており、東洋人も動物性プロテインの摂取が増えた。一方、西洋人の一部では動物性プロテインを食べないベジタリアンあるいはヴィーガンが増えてきている。しかも最近ではベジタリアンやヴィーガンといかないまでも、時には動物性プロテインを食べないフレキシタリアンと呼ばれる人が増えている。これは健康志向とともに環境問題などが議論されてきて、動物性プロテインを植物性プロテインに替える人が増えているためである。
植物性プロテインで最もよく使われているのは大豆プロテインで、これは肉代替え製品としてもよく使われている。豆腐は大豆プロテインが含まれており、日本ではよく食べられているが、アメリカでも最近はどこのスーパーに行っても販売されている。種類も柔らかいものから硬いもの、発芽大豆を使った豆腐、発酵させた豆腐などがあるが、豆腐の食べ方はかなり日本とは異なっている。つぶしてサラダのトッピングにしたり、フライパンで両面を焼いていわゆる豆腐ステーキにしたり、野菜炒めに混ぜたり、トッピングとしてピザにのせたりといった食べ方がアメリカでは一般的である。ホエイプロテインはチーズの製造の際にできるホエイから得られるプロテインで、ボディ・ビルディングをする人やジムでトレーニングをする人が筋肉増量のために摂取することが多いため大きな容器で販売されている。また、ホエイプロテインは種々の製品に使われている。乳プロテインも様々な製品に使われている。最近最も注目されているのは大豆以外の豆類のプロテインで、エンドウ豆、ソラ豆、ヒヨコ豆、その他の豆類を混合するか、あるいは単離した豆プロテインが多くの製品に使われている。米やヒマワリの種、亜麻の種、などからのプロテインも使われている。最近のアメリカやヨーロッパの食品市場では動物性プロテインを植物性プロテインに変えた製品、あるいはこれまでプロテインが余り入っていなかった製品にプロテインを増やしたりする商品が非常に多くなった。そうした製品を各カテゴリーで見てみよう。
植物性プロテイン製品: 最近プロテイン製品で注目されているのは、動物性プロテインを植物性プロテインに置き換えた製品で、アメリカで最も消費量の多いハンバーガーの挽肉を植物性プロテインに変えたBeyond Meat社やImpossible Foods社の製品が、この市場を引っ張っていた。2019年までは急激に伸びた植物性肉代替市場は、2022年以降はコロナのパンデミックで市場が伸び悩んでいるが、動物性プロテインは脂肪も多く入っており、食べ過ぎると健康によくないことや、動物性プロテインを生産する過程での環境負荷が非常に高いことから今後も一定の底堅い需要が見込まれている。動物性プロテインを植物性プロテインに置き換えた製品は、肉代替製品だけでなく、水産物、卵、乳製品などの代替製品へと広がりを見せている。こうした製品の代表的なものを (写真1)に並べてみた。 左から、チーズ、アーモンドミルク、豆乳、卵代替製品、牛挽肉と鶏挽肉代替製品、ツナ代替製品である。最近ではミール製品やスープ製品などでも植物性プロテインを使った製品が増えてきている。例えば、Hungry Plant社は植物性の肉代替ミール製品を出している会社で、一食で植物性プロテインを18g - 26g 摂取できると謳う、“Salisbury Steak Meal”, “Chicken Piccata Meal”, “Italian Sausage & Peppers Meal” の3種類のミール製品(写真2)を出している。これらはマイクロウエーブオーブンで加熱して、すぐに食べられるものである。“Salisbury Steak Meal” のサリスベリー・ステーキは濃縮大豆プロテインを使って作られており、“Chicken Piccata Meal”に含まれる鶏肉代替製品には大豆プロテインと小麦プロテインが使われている。 スープ製品の例では、Proper Good社が常温保存のできるパウチに入ったプロテインをしっかり摂取できるスープ製品(写真3)を提供している。 “Red Pepper Meat Ball Soup”, “Tomato Basil Soup”, “Chicken Noodle Soup”, “Broccoli Cheddar Soup”, “Cream of Chicken Soup”, “Spiced Pumkin Soup”, “Butternut Squash Soup”, “Split Pea & Kale Soup”, “Chicken & Mushroom Soup”, “Meatball Minestrone Soup” の10種類の製品を展開している、例えば “Chicken Mushroom Soup” は、ケトダイエット用で、低炭水化物、グルテンフリー、チキンボーンブロス使用、11g のプロテインが含まれ、炭水化物は8g、砂糖はゼロである。
プロテイン量を増やした製品: 朝食のシリアル製品は主に炭水化物であるが、プロテインも朝食時にしっかり摂取できるようにした製品が出されている。例えば、Post 社の “Premier Protein” のシリアル(写真4)には1サービング(42g)で20gプロテインが含まれている。プロテインには単離小麦プロテインと濃縮エンドウ豆プロテインを使っている。乳製品では牛乳のプロテイン量(1サービングに25g)を増やした製品がDarigold社より “Fit”(写真5)という商品名で販売されている。この製品はさらに脂肪を減らし、ラクトースも除いている。これは活動的な子供を対象にした製品である。ヨーグルトでもプロテインが多く入っている製品がスーパーマーケットの乳製品の棚に並んでいる。例えば、シンガポールの食品、飲料会社であるRatio Food社はアメリカでも製品を販売しており、“Ratio:” のブランドで “Ratio: Protein”(写真6) を出しており、1サービングに25g のプロテインが含まれている。プロテインはホエイプロテインを使用している。
バー製品にもプロテインを多く入れた製品が店頭に並んでいる。これは持ち運びができるので、スポーツやハイキング、山登りなどの途中で簡単にプロテインが摂取できる。また普段の生活でも、少しエネルギーが欲しいと思う時にはバー製品を口にする人も多い。アメリカのスーパーにはバー製品が多く並んでおり、それらの多くはプロテインを摂取するために作られている。例えば、”Gatorade” はPepsiC社のスポーツドリンクのブランドであるが、スポーツの合い間に食べてエネルギー補給をするエネルギバー “Gatorade G Bar”(写真7)を出している。 これには20gのホエイプロテインと乳プロテインが入っている。音楽やダンスなどの合い間にエネルギーを摂取したいと思う若者を対象にしたバー製品もある。“Jambar” ブランドのバー製品 “Jambar”(写真8)は、非遺伝子組み換え、グルテンフリー、そして穀物ベースのエネルギーバーを “Chocolate Cha”, “Malt Nut Melody”, “Jammin’ Jazzleberry”, “Musical Mango”の4種類のフレーバーで展開している。1本あたり10gのプロテインが入っており、ホエイプロテインとヒマワリ種子由来プロテインが使用されている。
スナック製品にもプロテインを添加した製品がある。スナックはもともと食事の間に少しお腹を満たすものでクッキーやクラッカーなど炭水化物が中心である。そうしたスナックでもプロテインが入ったスナックを求める人が多い。そのような人を対象にプロテインを加えたクッキーが幾種類か出されている。その中のQuest Nutrition社から販売されている “Protein Cookie”(写真9)は、プロテインブレンドとして、単離乳プロテイン、単離ホエイプロテインを使い、プロテインが1サービング(59g) に15gも入っているクッキーである。 スムージー製品などでもプロテインを加えた製品が出されている。シェイク製品でプロテインを加えたプロテインシェイク製品も多く出されている。中でもとりわけ興味があるのは高年齢層をターゲットにしたプロテインシェイク製品である。現在、”Ensure” と “Boost”(写真10) の2つのブランドが大きなシェアを持っている。“Ensure” には1日推奨摂取量の3分の1の量に当たる27種類のビタミン、ミネラルと16gのプロテインが入っており、ビタミンC、D、 亜鉛、セレンと免疫性を維持する栄養素も入っている。“Boost” も26種類のビタミン、ミネラルと14gのプロテインを摂取でき、同じような免疫性を維持する栄養素も入っている。医者などは、高年齢層の人にサルコペニアにならないようにこうしたプロテインシェイクを摂取することを勧めている。このように、プロテインの摂取が食生活に非常に大切であることが最近は明らかとなり、食品市場では種々のプロテインを使った製品が販売されている。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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