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2018.08.20
最近の世界の食品市場は健康志向になっている。アメリカも同じで健康志向の食品がますます増えている。業界は健康によい影響を与える食品を機能性食品と呼んでいる。日本の消費者庁では機能性を表示できる保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)と、できない一般食品を分類している(図1)が、アメリカにはそうした分類もされておらず、定義もない。筆者がまとめたアメリカの機能性食品の分類は、一般食品の中で機能性成分が多い食品、機能性成分を加えた食品、特定成分を減らした食品があり、さらに、栄養成分を摂取するためのサプリメント、医者の診断のもとに使われる医療用食品があり、これらはすべて食品である(図2)。今回と次回でアメリカの機能性食品とそのラベル表示について説明してみよう。食品及びサプリメントの栄養ラベル表示法では、食品の機能性については、病気や疾病の治療、回復、改善ができる食品並びに食品成分についての機能性表示は、食品医薬管理局 (FDA)の認可が必要である。この政府の認可が必要な機能性表示には、(A) 科学者諮問委員会がこれまでの病気と食品あるいは食品成分との研究で、健康効能効果が科学的に十分あると認められたもの(これはUnqualified Claimsと呼ばれている)、(B) 科学的な証拠はかなりあるが、まだ十分になく結論が得られていないもの、(C) 科学的証拠は限られており、結論も出ていないもの、(D) 科学的証拠は少ない、の4カテゴリーに分けられている((B)から(D)はQualified Claims と呼ばれている)。現在、(A) のカテゴリーでは次の12の健康効能の関係が認められている。


2. ナトリウムと高血圧
3. 脂肪とガン
4. 飽和脂肪酸とコレステロールと冠状動脈系心臓病
5. 食物繊維を含む穀類、野菜、果物とガン
6. 食物繊維、特に水溶性食物繊維を含む穀類、野菜、果物と冠状動脈系心臓病
7. 野菜、果物とガン
8. 葉酸と脊椎欠損症
9. カロリーのない糖、糖アルコールと虫歯
10. 水溶性食物繊維を含む食品と冠状動脈系心臓病
11. 大豆蛋白と冠状動脈系心臓病
12. スタノール/ステロールと冠状動脈系心臓病

この製品はオーツ麦粉をベースとし、含有するピーナッツ粉の量を段階的に200mgから2gへ増やして幼児ミルクに加えることで、幼児が徐々にピーナッツに対する免疫性をつけるという製品で、初めてこの製品だけにこのような健康効能表示が認められた。カテゴリー(B)には現在18の食品および食品成分がリストされている(表1)。現在、(C)、(D)のカテゴリーの表示は全く申請されていない。この(B)のカテゴリーの商品上での表示では、健康効能の記述に続いて、「この効能表示に関する科学的情報は限られており、結論はいまだ出ていない」、あるいは、「この効能表示に関する科学的情報は限られており、FDAはこの効能表示を支持するものではない」などの表示をしなければならないので、あえて効能表示をしていない製品が多い。


普通の食品やサプリメントでは効果が期待できる身体の部分やその機能性について表示をしているものが多い。これは、例えば、心臓の健康を維持するとか、関節の健康を保つ、免疫性を保つ、というような表示で、これらはFDAに認められている。これらの表示は病気の予防、改善、治療を表しているものではないので、多くの食品やサプリメントには書かれている。こうした機能性の表示されたサプリメントでは、“These statements have not been evaluated by the Food and Drug Administration. This product is not intended to diagnose, treat, cure or prevent any disease”(これらの記載はFDAによって評価されたものではない。この製品はいかなる病気の診断、処置、治療、予防のために使うものではない。)という記載がされている。この身体の部分やその機能性についての表示で、中には病気に関係することを表示しているものがあり、時々FDAが警告を出して回収をさせている。(次回に続く)
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
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