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2019.06.17
子供のための製品
筆者は年に数回アメリカと日本との間を往復しているが、日本でもスーパーで買物をしながら日本の市場傾向とアメリカの市場傾向を比較したりしている。その中で子供用製品という特定の年齢層を意識した製品についてアメリカと日本を比べてみた。そうすると日本の子供用製品というのは菓子類に集中しており、一般食品については子供用の製品は少ないように思われる。ちなみにGoogleで「子供用の食品」を検索すると、カレーのルー製品がほとんどで、その他には、子供の好むようなデザインにしたふりかけなどが多少出てくる程度である。一方、アメリカのスーパーに行くと、子供用の製品が幅広いカテゴリーで存在する。
朝食のシリアルは子供用の製品が多く並んでいる。すぐに食べられる乾燥シリアルでは、昔はコーンフレーク製品が主流であったが、最近はオーツ麦を使った製品が主流である。シリアル業界は最近は売り上げが落ち込んでおり、その理由の1つには消費者の健康志向がある。子供は甘いものが好きなので、砂糖を加えた製品や砂糖でコーティングした製品が昔はよく売れていた。例えばKellogg社の “Flosted Flakes” (写真1)やGeneral Mills社の “Lucky Charms”(写真2)のようなシリアルがある。 “Flosted Flakes” は1食分29g中、砂糖が10g、“Lucky Charms” は同じく1食分22g中に砂糖が10gも入っている。
最近よく売れているのは General Millsの “Honey Nut Cheerios” (写真3)でこれには1サービング(28g) 中に9gの砂糖が入っている。砂糖は他の一般的な製品よりもほんの気持ち少ないといった程度である。しかし、この製品は最近では売り上げがトップである。砂糖の量がそんなに少ない訳でもないのになぜ売れているのであろうか。実は親としては砂糖の量が1サービング(28g)中1gで、全粒オーツ麦からできている “Cheerios” (写真4)を子供に食べて欲しいのであるが、余り甘くないので子供はこの製品を好まない。
そこで砂糖の量は9gであるがオーツ麦からのベータグルカンが入っており(このシリアルには心臓病の予防になる健康効能表示が認められている)、また、自然の糖であるハチミツ(実は黒糖シロップも使っている)も使われているということで、他の砂糖の多いシリアルよりは少しでも健康的であるということで親は妥協して買っているそうである。ちなみにナッツと書かれているが、これはアーモンド・エキスを使っているだけである。乾燥シリアルには殆どビタミン、ミネラルが補助添加されており、栄養価をあげている。“Honey Nut Cheerios” の現在の栄養表示は(表1)である。
Kashiは少し前までは雑穀類で作った自然あるいはオーガニックのシリアル製品、グラノーラ製品、バー製品やメニュー製品などを出す独立した会社であったが、Kellogg社が買収し、今もそのままのブランド名で経営をしている。新しく出されたオーガニックのシリアル “Kashi by Kids”(写真5) は12歳から17歳のジェネレーションZの5人の子供が考えたシリアルで、“Honey Cinnamon Cereal”, “Cocoa Crisp Cereal”, “Berry Crumble Cereal” の3種類がある。包装の箱の裏にはシリアルを開発する過程で子供も含めたチームが行ったことを示す写真と、使われている材料などを説明している。このシリアルには1サービング (32g) 中に砂糖は7g、食物繊維は3g(1日必要摂取量の11%) が含まれており、スーパーフードであるオーガニックの紫コーン、赤色のレンチル、ヒヨコマメを使っている。朝食用のシリアルは子供が食べることが多いので、子供による、子供のためのシリアルであることを強調しており、この製品の売上も伸びているそうである。
子供にポピュラーな朝食製品の一つにKellogg社が出している “Pop Tart”(写真6) がある。これはアイシングのついた、ペイストリーにフィリングが入った製品であり、1964年の発売以来現在も販売されている。これに対抗して “Pillsbury” (現在はGeneral Mills) ブランドが “Toaster Strudel”(写真7) を1985年に出しており、この2社が競合している。
“Toaster Strudel” にはアイシングの袋がパッケージに添付されており、子供が自由にデザインできるようになっている。2社だけでなくPB製品も含めて常に新しいフレーバーや新しい包装デザインの類似製品が出されていて競争が激しい。朝食製品では冷凍ワッフルも子供の好きな製品であるが、大人にも結構消費されている。Kellogg社は “Eggo” ブランドで冷凍ワッフルを販売しており、このカテゴリーではトップで、子供サイズにした製品(写真8)も一部にはある。冷凍ワッフルは結構多くの会社が販売しており、スナックとしても食べられている。”Eggo” ブランドでは冷凍パンケーキ、冷凍フレンチトーストも出されている。
ランチ用製品ではデリのセクションにKraft Heinzが “Oscar Mayer” のブランドで子供用ランチ・キット製品を “Lunchable”(写真9) の商品名で出している。デリ肉、チーズ、ソースなどがキットになっており、自分で合わせてランチを作るもので、親はランチを作る時間を節約できるので重宝されている。サンドイッチ、ホットドッグ、ピザなどがあり、更にはジュースのついたもの、オーガニックのもの、少し大きめの子供用とか様々な製品が販売されている。
スナック製品にはNastle USAが出している冷凍食品の “Hot Pocket”(写真10)がある。これは子供が学校から帰ってきて、少しお腹が減っているときにマイクロウエーブオーブンで加熱してすぐに食べられるスナック製品で、大人でも食べている人がいるが、本来は子供用に考えられたスナック製品である。主にカットしたサラダ製品
を手掛けるCrunch Pak社は、Disney Elementとタイアップして、子供向けテレビ局のニケロディオンのキャラクターを使った “PAW PATROL” (写真11)という製品を出している。これには、リンゴ、チーズ、ブドウ、クラッカーの組み合わせと、リンゴ。チーズ、ディップソース、クラッカーの組み合わせの2種類がある。
Kellogg社は最近子供を対象にした全粒穀類を使ったスナック製品 “Quaker Kids Organic-Whole Grain Bites”(写真12) を出している。オーガニック製品が伸びており、特に子供には安全性からオーガニック製品を与える親が増えているので、大手でもこうしたオーガニック製品を出すようになってきた。
ディナー製品でも子供用製品がある。冷凍ディナー製品ではConAgra社が “Kid Cuisine”(写真13) のいわゆるTYディナー製品を出している。これには保存料などが一切使われていない。またKidfresh社は自社名ブランドで子供用の冷凍ミール製品を数種類出している。この “Spaghetti Loops – Pasta’n Meat Sauce” (写真14)にはピューレにした野菜が使われており、野菜をしっかり摂取できるようにしている。勿論、この会社の製品には添加物や合成色素が一切使用されておらず、更にはその原料についても、ホルモン、抗生物質などが一切使われていないものを使用している。

今回は子供用製品の例をいくつか紹介した。アメリカでは大手や本来成人向けの食品を手掛ける会社から出されているものも多いが、同時に子供製品に特化した食品会社も多くあり、食品会社が子供用製品を大きな市場と捉えて力を入れていることがうかがえる。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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