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2020.07.15
農業が発達して以降人類が長い間主食としてきたのは、炭水化物としての穀類である。西洋では麦類をパンとして、東洋では米を主食として食べてきた。今でもアメリカではパン(ブレッド)が主食のように考えられがちだが、それはアメリカ市民の中心がヨーロッパ系の民族であった半世紀前まではそう言えたかもしれないが、最近ではパンの食生活の中で果たす役割は日本の米に当たるような主食とは言えないようである。朝食ではパン類だけでなく、シリアルやパンケーキ、ワッフルなどが定番化されて久しいが、最近ではさらにメキシカンのブリートやバー製品なども朝食として食べられている。家庭では前日のディナーの残りなどでランチを済ます人も多いが、外でランチを食べる場合はサンドイッチ(ハンバーガーもサンドイッチである)がよく食べられる。夕食ではパスタ類、ピザ、ポテト料理やメキシカン料理をはじめとする民族料理が広く取り入れられており、パンを食べる家庭は少なくなっているようである。それにケトジェニック・ダイエット(ケト・ダイエット)あるいはパレオ・ダイエットなどの低炭水化物ダイエット法が最近では流行っており炭水化物であるパンを敬遠する人も増えてきている。
しかし、スーパーマーケットに行くと今でも多くの色々なパン製品が並んでいる。日本にあるような食パンはアメリカにはない。アメリカのクラシックな食パンというのは1斤が30cmほどの長さで、空気の一杯入ったふわふわのパンである。よく知られているのはFlower Foods社の “Wonder” ブランドのブレッド(写真1)で、たいていはそのままサンドイッチを作るのに使われている。子供達の大好物で、よく学校のランチに持っていくピーナッツ・バター・アンド・ジェリー・サンドイッチは、このパンの1枚にピーナッツバターとイチゴジャム(ほかのジャムも使われる)を塗り、それに何も塗っていないパンをもう一枚を重ねて作る。簡単にできるので、親にとっても便利なサンドイッチである。食パンには多くの種類が出されている。漂白した小麦
を使ったクラシックな “White Bread”、全粒小麦を使った “Whole Wheat”、全粒白小麦粉を使った “Light Whole Wheat”、ポテト粉を使った “Potato Bread” をはじめ多くの種類がある。食パンの形をしたパン以外では、イングリッシュマフィン(写真2)とベーグル(写真3)がポピュラーなパンである。ディナーの時によく食べられるのはディナー・ロールで(写真4)である。ハンバーガーとホットドッグ用のバンはさすが多く並べられている。こうしたバンはホワイトブレッドが多いが全粒小麦のものも出されている。以前はデニッシュが多く並んでいたが、最近は健康志向で砂糖を多く使った製品は敬遠されがちで、余り置かれなくなった。

最近の消費者市場は健康志向が強く、パン製品では全粒穀類製品を使ったパンが非常に多く出されており、スーパーマーケットの棚に並んでいるパン製品のほぼ半分以上が全粒穀類を使った製品である。全粒穀類といっても、全粒小麦製品から、21種類もの全粒穀類や種子類が入った製品まで種類はものすごく多い。さらにナッツや乾燥フルーツを入れた製品もあり、非常にバラエティーが豊富である。オレゴン州ポートランド市にあるDavid's Killer Bakeryは15年間監獄で過ごしたDavis Dahl氏が兄の経営していたベーカリーで仕事を始め、オーガニックの新しいパンを作ってヒットし、彼の過去を前面に出して大きくなったベーカリー会社である。この会社は現在ではFlower Foods社に吸収されたが、種々のオーガニックの全粒穀類製品を出している。
21種類もの全粒穀類と種子類(全粒小麦、アマの種、ヒマワリの種、引いたアマの種、茶色のゴマ、トリティカーレ、パンプキンの種、挽いたバーレイ麦、挽いたオーツ麦、挽いたオーツ麦、黒ゴマ、紫コーン、ミレー、挽いたスペルト、玄米粉、アマランス粉、黄色コーンミール、コラサン小麦、キノア、そば粉、ソーガム粉、ポピーの種)を入れた “21 Whole Grains and Seeds”、全粒小麦粉に全粒のアマの種、ヒマワリの種、茶色のゴマ、黒ゴマ、挽いた全粒アマの種、挽いたオーツ麦を入れた “Good Seed” や、同じように数種類の種子類を混ぜた “Powerseed”、小麦粉、全粒小麦粉、バーレイ麦粉、ライ麦粉、スペルト粉、ミレー粉、キノア粉、ポテト粉を使い漂白粉を使っていない “Whole Bread Done Right”、全粒小麦粉にヒマワリの種、挽いたオーツ麦、紫コーンミール、茶色ゴマ、黒ゴマ、挽いたアマの種を混ぜた “Oat 'N' Blues”、オーツ麦とアマの種を使った “Sweeti Oats & Flax”、全粒小麦粉だけを使った “100% Whole Wheat” など、オメガー3-脂肪酸、食物繊維、プロテインなどがしっかりと入ったパン(写真5)を多数出している。現在ではどこのベーカリー会社も、このような雑穀類や種子類を使った全粒穀類のパンを多く出して消費者の健康志向に合った製品を出している。
発芽させた穀類、種子類が最近の健康志向の消費者の関心を集めている。穀類や種子類は発芽の際に、炭水化物、プロテインが分解され、さらには成長に利用されるビタミンなどの栄養素が発芽部に多く含まれていることから、人間が摂取したときに身体により吸収されやすいといわれている。発芽させた穀類、種子類は乾燥させて粉にして使われることが多い。例えば、Angelic Bakehouse社の “Raisin Wheat Bread” は発芽させた全粒小麦粉を使ったレーズン入りのパン(写真6)で、1サービング(28g) のカロリーは70で、食物繊維が3g、プロテインは4g含まれている。
最近、プロテインが注目されており、低炭水化物ダイエットをする人も含めてプロテインを多く摂取する人が増えている。普通のパンは1サービングで10%以下のプロテインしか含まれていない。前出の “David's Killer” ブランドのパンも1サービング(45g) に含まれているプロテインは約5gであり、普通よりは少し多い程度であるが、さらにプロテインを加えたパンが出されている。Franz Bakery社は “Organic The Great Protein”(写真7)という商品名のパンを出しているが、これにはプロテインが7g/57g 含まれている。P28 Nutrition社はプロテインを多く摂取したい人のために、“P28” ブランドで “The Original High Protein Bagels” (写真8)を出している。これには単離ホエイ・プロテイン、単離小麦プロテイン、グルテンが添加されており、28g/47g(1スライス) と非常にプロテイン含有量が高く、ジムで筋肉作りなどをしている人やスポーツをする人を対象にしている。
グルテンは小麦、ライ麦などに含まれており、セリアック病、グルテン過敏症や小麦アレルギーの人は普通のパンは避けた方がいい。グルテン・フリー製品は最近非常に伸びているが、パン製品でもこうした人のためにグルテン・フリーのパンが多く出されている。“Udi's”, “Rudi's”, “Glutino”, “Canyon Bake House”, “Katz” などのグルテン・フリー製品のブランドでパン製品(写真9)が多く出されている。こうしたグルテン・フリーのパンは、米粉とコーンスターチ、その他のグルテンが入っていない成分を使って作られている。
アメリカではパンが冷凍でも販売されており、また室温保存の半焼製品で購入者がオーブンで焼上げるパンもある。日本にはないパン製品としては、General Mills社が出している “Pillsbury” ブランドの冷蔵の生地製品(写真10)がある。これは紙の筒を開けて生地を出し、自分で形を作ってオーブンで焼いて食べる生地製品で、これにはイーストは使われておらず焼いたときに膨張剤で膨らむようになっている。パン製品はイースト・フレーバーでパンの匂いがするように作られている。このようにアメリカの市場のパン製品は非常に種類が豊富である。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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