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2021.02.15
アメリカ人は朝食に何を食べているのかという質問を時々受ける。日本ではごはんかパンのどちらかであることが圧倒的に多いようである。一方、アメリカではほとんどの家庭の子供は “Kellogg” のようなドライ・シリアルに牛乳をかけて食べている。この
ドライ・シリアルは1877年に医者でベジタリアンであったジョン・ハービー・ケロッグ氏が、小麦・オーツ麦やコーンミールを混ぜ合わせたものを約1.3cmの厚さに伸ばした後ビスケット状にして焼き、さらにそれを砕いて“Granula” の商品名で販売したのが初めてである。しかし “Granula” の商品名は当時他人が既に使用していたために、提訴されてしまい、1981年に商品名が “Granola” に変更された。その4年後にケロッグは小麦をお湯で柔らかくした後にローラーで薄く引き伸ばして焼き、さらにそれをフレーク状にした “Granose” という商品名の製品を発売した。この頃小麦は1ブッシェル60セントであったのを、シリアルにして1ブッシェル $12に当たる値段で販売した。さらに1898年には兄弟のウイル・キース・ケロッグ氏の経営するSanitas Nut Food社よりコーン粉から作ったフレーク状のシリアルをトーストした “Toasted Corn Flakes”が発売された。これが現在の “Kellogg” コーン・フレーク(写真1)の始まりである。この頃にはまねをした同じようなドライ・シリアル製品を出す会社が多くできた。ドライ・シリアルは便利さから市場は拡大し、その後多くのブランド製品が出され、現在ではKellogg、General Mills、Quaker Oats、Ral Corp、Post Consumer Brands社などがメジャー・ブランド製品を出している。こうしたシリアル製品は子供が好きになるように砂糖を多く使った製品が次第に増えていった。2019年にドライ・シリアルで最も売れている製品は General Mills の “Cheerios” (写真2) で、オーツ麦で作られたリング状のシリアルには可溶性食物繊維のベータグルカンが多く含まれており、コレステロールを下げ、心臓病のリスクを下げる健康効果がFDAの食品の健康効能表示に認められている。
そのために、このシリアルは大人でも食べる人が多い。最近では健康志向で消費者もあまり砂糖の多く入った製品を買わない傾向にある。しかし、子供はやはり甘いシリアルを好むので、蜂蜜で甘味をつけた “Honey Nut Cheerios”(写真3) が2番目によく売れており、3番目はKellogg社の “Frosted Flakes”(写真4) である。Post Consumer Brands社の蜂蜜を使って甘味をつけた製品 “Honey Bunch of Oats”(写真5) が4番目の人気商品である。親の多くは子供に “Cheerios” を食べさせたいが、子供が少し大きくなると甘いシリアルを選ぶようになる。蜂蜜で甘味をつけている製品が増えているのは、蜂蜜は砂糖よりも身体にいいと考えている人が多いためである。ドライ・シリアルと下に書いたホット・シリアルを合わせたシリアル市場は2012年から2017年には9% も売り上げが落ち込んでおり、シリアルの売上の87% を占めるドライ・シリアルはこの期間に11% も落ち込んでいる。健康志向と他のタイプの製品が増えたことで、売り上げがこの10年間ほどは下がっている。ドライ・シリアルにはナッツ、ピーナッツを使った製品も出されている。ナッツで使われているのはほとんどアーモンドで、ペカンを使った製品もわずかにある。
最近では、Kelloggの “Crunch Nuts”(写真6) のようなナッツやピーナッツを細かく砕いたものをシリアルに混ぜた製品がいくつか出されている。ドライ・シリアルはアメリカの家庭の86% が食べているとし、そのうち43% がスナックとしても食べているとしている。 ドライ・シリアルの中で最近よく売れているのがグラノーラで、グラノーラは挽いたオーツ麦とナッツを混ぜたものに蜂蜜や砂糖を混ぜてオーブンで焼いて香ばしい穀類とナッツの塊にしたもので、乾燥果物やチョコレート・チップスを加えるものもある。これは前述したKelloggのシリアルの名前を使ってリバイバルされたものであるが、全粒のオーツ麦を使い、ナッツと乾燥果物が入った健康にいいシリアルの一般名として使われるようになった。例えば、“Nature's Path” ブランドの “Honey Almond with Chia Seeds”(写真7)は、挽いたオーツ麦、砂糖、ヒマワリ油、ローストしたアーモンド、クローバーの蜂蜜、蜂蜜フレーバー、米スターチ、海塩、チアの種、トコフェロール(ビタミン)(保存料)が原材料として使われており、朝食としてだけではなくスナックとしても食べられており、持ち運びができ、どこでも食べられる便利なシリアルである。砂糖や蜂蜜を使っていないものはミューズリと呼ばれているドライ・シリアル製品である。
ドライ・シリアルが出される前は、小麦やコーンなどの穀類を細かく砕いてミールにし、それに水を加えて加熱して食べるホット・シリアルが朝食としてよく摂られていた。健康志向で昔のホット・シリアルも見直されている。特に “Quaker Oats”(現在はPepsiCo社の1部門になり、ブランド名として残っている)はオーツ麦の健康効能表示の認可を取っているので、 “Quaker Oats” ブランドのオートミール新製品を次から次へと出しており、一般スーパーマーケットなどでは棚のかなり広い部分を占有しているほどで、市場シェアは約60%である。最近ではカップに入った個食サイズの製品(写真8)も出している。ホット・シリアルとしてはほかには小麦は “Cream of Wheat”(写真9)として、コーンは “Corn Grits”(写真10) として、米も “Cream of Rice”(写真11)として販売されている。子供はホット・シリアルをあまり好きではなく、主に大人が食べている。最近はインスタントの製品が多く出されており、マイクロウエーブで短時間に準備ができるものが多くなっている。
これらのシリアルを固めたバー製品やビスケット製品も朝食用に多く販売されている。バー製品には “KIND” ブランドのプロテインを増やした “Breakfast Protein” のシリアル・バー製品(写真12)や、“Nature's Path” ブランドの “Sunrise” のグラノーラ・バー製品(写真13)など、多くの製品がドライ・シリアルの棚の横に並んでいる。また、そこには朝食用のビスケット製品もある。例えば、“Belvita” ブランドの朝食用ビスケット “Golden Oats Breakfast Biscuits”(写真14) は、挽いたオーツ麦、ライ麦のフレーク、栄養強化した漂白小麦粉、全粒小麦粉から作られており、ビタミン、ミネラルが強化されている。こうしたバー製品やビスケット製品は、朝会社やセールスに出るのに時間がない人達がポケットに入れて通勤の車中や、勤務先で食べるというニーズにマッチしてよく売れている。
朝食にパンをトーストして食べる人も多い。パンの種類が多く、白い食パン、全粒小麦の食パン、雑穀類の入った食パン、イングリッシュマフィン、ベーグルなど色々なパンが食べられているが、日本のようなトースト用のしっかりした食パンは売られていない。ほとんどが柔らかいパンである。これはパンの主な使途がサンドイッチだからである。たいていの子供はサンドイッチをランチボックスに入れて学校に行く。ペイストリーやドーナッツを朝に食べる人もいる。日本にはない製品で、ペイストリーで子供用のトースター・ペイストリーという製品(写真15)もある。これはフィリングが入ったペイストリーで、トースターで温めて食べる物である。
アメリカの家庭では週日は朝出かけるのにバタバタするので、早く簡単に食事をする家庭が多い。しかし、週末になるとゆっくりできるので、パンケーキやワッフルを子供と一緒に焼いたりする家庭が多い。スーパーマーケットに行くと朝食用の冷凍製品がかなりある。冷凍のパンケーキ(写真16)、ワッフル(写真17)から朝食用サンドイッチ(ハンバーガーの小さいものや卵とソーセージを挟んだもの)(写真18)、卵料理(写真19)、その他ソーセージ(写真20)などなど、マイクロウエーブでチンをすれば食べられる製品も多い。

以前にアメリカの家庭で毎日朝から晩まで何を食べているかの調査をしたことがあるが、多民族社会でもあるので、実に多彩な食事内容であった。朝食では各家庭で必ずしも似たようなものが食べられているわけではなく、上に挙げたような食品が色々と組み合わされて食べられているようである。子供は普段はシリアルやパンを食べて、週末にはパンケーキを食べるとか、親でもパンの日もあればシリアルあるいはホットシリアルを食べる時があるというような感じである。ある家庭ではセールスをしている父親は毎日メキシカンの朝食サイズのブリトースを食べて家を出るが、母親と子供達はシリアルであったり、果物だけを食べる日があったりとか、かなりバラエティーに富んだ朝食を摂っている。これがアメリカの朝食の実態である。
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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