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2022.07.11
我々は空気を吸って生きているが、その空気の中でも酸素を必要としている。酸素がなければ生きてはいけないが、酸素がなぜ必要かというと、酸素を体内に吸収することで、糖質や脂質を分解して身体のエネルギーとしているからである。身体検査で肺活量を図ったことがあると思うが、これはどれだけ空気(酸素)を取り入れることができるかを測定するためである。運動選手などは最大酸素摂取量 (VO2max) を測定し、運動をするときの全身持久力がどれくらいあるかを調べることは一般によく行われている。ウォーキング、ジョギング、ランニング、水泳、バイクなどは有酸素運動として酸素をより多く吸収し、持久力を高め、また脂肪を燃やすことで体重をコントロールすることもできる。酸素は肺で取り入れられ、血液の中に溶けて身体全体で使われる。特に脳には酸素が必要で、酸素が欠乏すると脳の機能が低下して死亡することもある。血中酸素飽和濃度は 96〜99% が正常だといわれている。95% 以下になると異常として医師の診断を必要とする。最近では血中の酸素濃度を測定するAppがあるのでいつでも測定できるようになっている。
ところが、酸素は我々が生命を維持し、健康を保つために必要である一方、身体の中で悪いこともする。過剰な運動、運動不足、疾病、疲れ、紫外線、放射線、アルコール、ミネラル成分、公害物質、ストレス、不規則な生活など種々の理由で、酸素は体内で、活性酸素、ラジカルを発生し、いわゆる酸化ストレスを身体にもたらす。つまり、活性酸素やラジカルの量が増えることによって、健康のバランスを崩すことになる。酸化ストレスが続くと健康を害し、ひどい場合は、心臓血管系疾病、痴ほう症、パーキンソン病、老化の促進、炎症、ガン、その他の病気の原因になる。この活性酸素、フリーラジカルの代謝物であるヒドロペルオキシドの血中の量を測定することによって、酸化ストレスが起きているかどうかがチェックすることができる。しかし、普通に規則正しい生活をし、多くの種類の食品を摂取し、栄養的にバランスのとれた食事をしていると、活性酸素やラジカルは除かれて健康を保つことができる。抗酸化物質はこうした酸素のいたずらを阻止するものである。多くの食品には抗酸化物質が含まれている。今回はこの抗酸化物質と抗酸化物質を含む食品について書いてみようと思う。
抗酸化物質としては、アルブミン、トランスフェリン、セルロプラスミン、ビリルビン、尿酸、還元グルタチオンなどが存在し、血液中で活性酸素やフリーラジカルを取り除く役割を担っている。また、食事とともに摂取したビタミン類【ビタミンA、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)】、カロテノイド類(βカロチン、アスタキサンチンなど)、ポリフェノール類、メチオニン、ユビキノン(コエンザイム Q10)、ミネラル(亜鉛、セレン)などには活性酸素やフリーラジカルに電子を与える還元反応としての抗酸化作用がある。ポリフェノールには多くの物質があり、アントシアニン類、カテキン類、カカオポリフェノール類、ルチン、フェルラ酸、クロロゲン酸、クルクミン、ショウガオール、ミネラル類などがある。フラボノイドもポリフェノール化合物で、アントシアニジン類、フラバノール類、フラバノン類、フラボノール類、フラボン類、イソフラボン類など多くの化合物がこのフラボノイドに属する。つまり、こうした物質が身体の中で酸素の望ましくない反応を阻止してくれるのである。したがって、こうした抗酸化物質を含む食品を摂取すると健康を維持することができるのである。
こうした抗酸化物質を含む食品としては、赤、青、紫色のベリー類(イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、ブドウ、ブラックベリーなど)、赤ワイン、チョコレート、紅茶、コーヒ、緑茶、フルーツ(オレンジなどの柑橘類、リンゴ、トマトなど)、野菜類(オニオン、大豆、ホウレン草、ゴボウ、ブロッコリなど)、スパイス類などが挙げられる。最近、よくスーパーフード、スーパーフルーツなどと言われている身体にいい食品の多くは、こうした抗酸化物質を含んでいる。スーパーフードは、抗酸化物質だけでなく、オメガ‐3‐脂肪、食物繊維、プロバイオティックスなど健康に効果のある物質が多く含まれる食品群の総称であり、特に定義はされていない。抗酸化力はいくつかの方法で測定することができるが、アメリカ農務省はこれまでの研究データを基にして算出した、様々な食品に関する酸素ラジカル吸収能力 (ORAC) 値の表を作って公開している(1)。このORAC値は食品の抗酸化能力を示す値であり、食品の抗酸化作用の強弱を示している。農務省のORACデータでナッツ類についてのデータを取り出してみた。この表1でわかるようにナッツ類も抗酸化力は高いほうで、特にヘーゼルナッツ、クルミは非常に高いことが分かる。ちなみに抗酸化力が強いと言われるブルーベリーのORAC値は、ワイルド・ブルーベリーで9621 で、栽培種のブルーベリーは4669である。
最近では、抗酸化物質が多く含まれる食品を摂取したとしても、必ずしも血中の抗酸化物質量を上げるとは限らないことを、アメリカ農務省の科学者が示している。研究(2)では異なったフルーツ(ブルーベリー、チェリー、乾燥プラム、乾燥プラムジュース、ブドウ、キウイ、いちご)を被験者に摂取してもらい、抗酸化力 (Antioxidant Capacity-AOC) を測定している。その結果、食品に含まれるフリーラジカルを分解する抗酸化物質は複雑で、中には吸収が早く効果的に抗酸化作用に利用されるものもあれば、吸収が遅く効果の少ないものもある。例えば、プラムは抗酸化物質が多く含まれているが、血中の抗酸化力(AOC)を有意に上げなかった。プラムの抗酸化物質にはクロロゲン酸が含まれており、この物質は身体に吸収されにくいものである。またブルーベリーは血中のAOCを上げるには、普通に食べる1食分よりもかなり多くの量を食べなければならない。ブドウやキウイは血中AOCをかなり上げたが、どの物質がAOCを上げたのかは不明である。被験者が抗酸化剤の入っていない、プロテイン、炭水化物、脂肪の入ったシェイクを飲んだ場合は、血中のAOCは下がっている。抗酸化物質の身体への吸収や、その効果については、さらなる研究が必要であると研究者は指摘している。
こうした抗酸化力は健康志向の市場では一つのマーケティングのツールとして利用されている。10年以上前に抗酸化剤が初めて注目された際には、抗酸化剤を加えた製品には必ずと言っていいほどORAC値が表示されていたが、今日では抗酸化物質の健康への効果がよく認知されているため、単にAntioxidantsとだけ表示されたものや、その効果のみをシンプルに表示したものの方がより一般的である。例えば、粉末ビーツ、ビーツ・エキス、抗酸化物質が多く含まれているグレープシード・エキス、およびL‐シトルリンを混ぜて作った”Force Factor” ブランドのチュウ(ヌガー状のキャンディー) “Total Beets”(写真2) はエネルギーを与え心臓の健康をサポートする機能性食品であるが、これには “Energy +Antioxidants” とだけ書かれている。
ストレスなどが高い人で、抗酸化剤を摂取してできるだけ健康を保とうとする人には抗酸化剤のサプリメントが出されている。例えば、”NOW” ブランドの “Supper Antioxidants”(写真3) には、緑茶葉のエキス、オオアザミのエキス、ターメリック・エキス、ケルセチン、ブロメライン・エキス、ローズマリー(葉)、グレープシード・エキス、ギンコ・ビローバ・エキス、しょうがの根、ホーソン・エキス、クランベリー粉末、ビルベリー・エキスが使われている。これらの多くの成分には抗酸化物質が含まれている。 また、”Country Life” ブランドの “Super 10 Antioxidant“(写真4) には、ビタミンE、アスコルビン酸カルシウム、ビタミンA(βカロチンとして)、亜鉛、セレン、抗酸化ブレンド(緑茶エキス、ブドウ・エキス、グレープシード・エキス)、N-アセチル・システイン、クルクミンC3複合体(クルクミノイドが含まれる)といった様々な抗酸化活性成分が含まれている。このサプリメントは免疫性を維持し、皮膚と目の健康を維持するとしている。しかしながら、抗酸化剤はいくらでも摂取していいというものではない。過剰摂取は免疫システムを壊し、細胞やDNAに損傷を起こし、悪性腫瘍などを起こす可能性があるので、気を付けて摂取する必要がある。できるだけ、抗酸化物質を多く含む食品を数多く摂取し、栄養的にバランスが取れた食事をすることをお勧めする。
(1) https://www.orac-info-portal.de/download/ORAC_R2.pdf
(1) Journal of the American College of Nutrition, Vol.26, No.2. オンライン発表
©アメリカ食品産業研究会
著者:吉田隆夫プロフィールを見る
吉田 隆夫 (よしだ たかお)
Takao Yoshida
1968
1968 - 1970
1972
1972 - 1974

1974 - 1985
1985 - 1990
1990
1999
2002
2016
大阪大学理学部化学科修士課程卒
マイアミ大学学術研究助手
大阪大学理学部化学科理学博士取得
シラキュース大学化学科学術研究員
*2010年ノーベル化学賞受賞 根岸英一氏「シラキュース大・根岸研究室」で協働
International Flavors & Fragrances 社 主任研究員
Carlin Foods/Bunge Foods 社国際事業部長
JTC インターナショナル創立
アメリカ食品産業研究会設立
e-食安全研究会設立
クリエイティブ食品開発技術者協会設立


インターナショナル食品安全協会会員、アメリカ化学会員、アメリカ食品科学技術者協会会員-プロフェッ
ショナル・フェロー、アメリカ食品産業研究会会長、e-食安全研究会理事長

学術論文:21(化学学術論文)、技術特許:40以上



e食安全研究会 理事長
アメリカ食品研究会 会長
クリエイティブ食品開発技術者協会 専務理事
理学博士
IFT 認証食品科学士

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